『深緑の瞳が射抜く、二十歳の覚醒――。無垢な少女の皮を脱ぎ捨て、真っ赤な唇で沈黙を破ったアイドル「SAYA」が、銀色の閃光の中で誓った「偽りのない自分」への変貌と、観客を飲み込む熱狂の夜。』

満員のコンサートホールの喧騒が、開演直前の静寂へと変わる。ステージの袖で、SAYAは自分の指先を見つめていた。今日、彼女は二十歳になった。

これまで、彼女は「都合の良い人形」だった。事務所が求める清純な笑顔、ファンが喜ぶ控えめな態度。しかし、鏡の中にいる「新成人のSAYA」は、何かが違っていた。衣装のシルバーのスパンコールは、まるで脱皮を待つ龍の鱗のように鋭く光っている。彼女はゆっくりと、自分でも驚くほど鮮やかな真っ赤なリップを唇に引いた。それは、昨日までの自分への決別を意味する「戦闘の赤」だった。

スポットライトが彼女を捉えた瞬間、会場の空気が凍りついた。 そこにいたのは、いつもの「守ってあげたくなる美少女」ではなかった。照明を浴びて妖艶に輝くダークグリーンの瞳は、深い森の奥にある湖のように神秘的で、射抜かれた観客は動くことすら忘れてしまう。その瞳には、子供特有の迷いは一切なく、冷徹なまでの自己愛と野心が宿っていた。

イントロが流れる。SAYAはマイクを握りしめ、観客を見下ろした。彼女が歌い始めたのは、予定されていた可愛らしいラブソングではなく、自身の葛藤を綴った未発表の激しいロックナンバーだった。

「私を見て。本当の私を」

歌声は空気を震わせ、銀色のドレスが動くたびに光の飛沫を散らす。彼女が手を伸ばすと、ステージの熱気が物理的な圧力となって押し寄せる。最前列のファンは、彼女の瞳に吸い込まれるような錯覚に陥った。その深い緑色は、見る者の心の奥底に隠した秘密を引きずり出すような、不思議な魔力を持っていた。

曲のクライマックス、SAYAは唇に指を当て、いたずらっぽく、そして残酷なほど美しく微笑んだ。その瞬間、会場は悲鳴のような歓声に包まれる。彼女は今、単なるアイドルから、人々を魅了し支配する「女王」へと変貌を遂げたのだ。

鬼岩正和(作家、実用書著者、AIアートクリエイター、エッセイスト、そしてパノラマ写真家、WEBシステムエンジニア)

ライブが終わり、汗を拭いながら楽屋の鏡の前に座る。そこには、二十歳の誕生日という儀式を経て、完全に覚醒した一人の女性がいた。真っ赤な唇を少しだけ緩め、彼女は自分自身に囁いた。

「さあ、世界を捕まえに行こう」

SAYAの新しい人生は、この銀色の夜から始まったばかりだ。彼女の瞳に映る未来は、誰にも予測できないほど深く、そして輝いている。

バズってる

Posted by さ~ヤン